楽しそうな笑い声と共に何か柔らかいものを殴打する音が響いていた。
四方を金網で囲まれた空間からだ。リングである。合法的に人間を殺せる場所の1つだ。
それはいわゆる非合法な格闘イベントであった。中東のある石油王が主催で行っているものだ。
個人的なイベントではあるが、それでも名の知れた格闘家や元メダリスト、 プロレスラーといった顔ぶれをちらほらと目にする事が出来る。
しかしその大会で最も注目を浴びていたのは、ある富豪が連れてきた一人の巨人だった。
リングの上ではもうあと数分、いや数秒で彼の優勝が決まるだろう。
巨人を連れてきた富豪は終始機嫌が良かった。それはまるで飼っている犬が品評会で賞を獲ったかのような感じであった。
大会優勝後、巨人を連れていた富豪は主催者である石油王からF.F.S.という非合法格闘大会が再び開催される事実を聞き、 参加してはどうかと誘いを受ける。 顕示欲の強いその富豪がF.F.S.への参加を決意するのにそう時間はかからなかった。