薄暗い闇の中。
断続的に鋭く空を切る音が室内に響き、それに続いて重く鈍い衝撃音が周囲の空気を揺らす。
半ば廃墟化し、打ち捨てられた施設跡。 崩れた屋根や剥がれ落ちた壁の穴から漏れ入る月明かりが、 流れる雲の隙間をぬって時折室内の情景を照らし出していた。
錆びた鉄骨、散乱するガラス片、コンクリートやレンガの瓦礫が転がる室内では、一人の男が延々と古びた人型の木製ダミーを相手に、
蹴りや突きを繰り返し放っていた。男が繰り出す凄まじい攻撃に、古びたダミーは今にも粉砕されんばかりに上下左右へと激しく揺さぶられている。
そんなことをいったいどれだけ続けているのだろう、一心不乱に休むことなく攻撃を繰り返す男の足元には、流れ落ちた汗の染みが大きく広がっていた。
男の名はゼン。
バロールの生き残りにして、“ディアブロ”と恐れられた格闘家である。
そして、PROBE-NEXUSが主催する非合法賭博バトル、F.F.S.の第5回優勝者でもあった。
ゼンが第5回F.F.S.に挑んだ目的は、ルーグに会い、彼と闘って倒すことだった。
長年、それだけを目指してきたゼンにとって、F.F.S.で見事ルーグを倒したことは自らの目的を達成し得た瞬間であった。
しかし、それは同時に幼い頃からルーグの圧倒的な強さを間近で見てきたゼンには信じられない、いや信じたくないことでもあった。
なぜなら、ゼンがルーグを倒すべき存在として追い求めつつも、強さを目指す頂点として一種の憧れのような思いを持っていたからかもしれない。
―倒したいが、倒れて欲しくはない―。
そんな相反する思いをゼンは持っていたのだろうか。
バロール時代のゼンにとって、ルーグという男はそれだけ大きな存在であったのだ。
そして、それは今も尚変わらない。
“オレは本当にルーグを倒したのか・・・?オレは本当に強くなったのか・・・?”
そう心の中で何度も自問自答を繰り返していた。
バキャン!!
あまりの勢いに、とうとう古びたダミーは粉砕し、破片があたりに飛び散った。
荒い呼吸を整えつつ、ゼンは腰を落として足元の破片に何気なく手を伸ばす。
と、次の瞬間、拾い上げた破片を出口付近の暗がりに鋭く投げつけた。
しかし、破片は何かにぶつかったような音も無く、暗がりに飲み込まれていき、変わりに人の声が返って来た。
「見つかりましたか。」
まるで、かくれんぼでもしていたかのような台詞と共に、月明かりの中へ一人の男が姿をあらわした。
ハザマである。 彼はF.F.S.を主催するPROBE-NEXUSの前会長秘書を務めていた人物だ。
「第5回F.F.S.の優勝者ともあろう人がこのような場所で何をしているんです?それも、そんなに必死な様子で。とてもあのグリードを倒した人物とは思えませんね。」
ハザマはからかうような口調で挑発し、ゼンに向かって先ほどの破片を投げ返した。 鋭いナイフのように飛んでいく。当たれば、ただでは済みそうにない勢いであった。
ゼンの拳が空気を鳴らし、破片が砕けると同時に破裂音が室内に響いた。
それも二回。ハザマは破片を同時に二つ投げていたのだ。
「そういうテメェは、なんの用だ。覗きが趣味ってわけじゃねぇだろ。」
ゼンは拳についた木屑を軽く振って落とし、ハザマを鋭く見据える。
ハザマはそんな視線を軽く受け流しつつ、本題を口にし始めた。
「本日はお伝えしたいことがあって参りました。簡単に申し上げますと、6回目のF.F.S.開催が正式に決定したのです。
つきましては、前回優勝者である貴方に是非参加していただきたく、お願いにあがったという次第です。」
ハザマの言葉に対し、ゼンは少しも興味を示さず背を向ける。
しかし、次の一言が彼を振り返えさせた。
「あの男―――グリードが現れるかもしれませんよ。」
ハザマは見透かしたようにそう付け加えると、漆黒の封筒を傍らに置き、暗闇の中へ姿を消した。
ハザマが去った後、ゼンは両の拳を静かに見つめる。彼にとって、この拳は全てであり、唯一信じられるものであった。
“オレはこれで自分の答えを見つけだす。そして、再びルーグに会った時…。”
ゼンは己の中に固く刻んでいた。
※キャラクターが右向きの場合
LP=弱パンチ、SP=強パンチ、LK=弱キック、SK=強キック、D=ダッジ
特殊技
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龍頭砕(りゅうずさい)
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龍鱗破(りゅうりんは)
必殺技
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斬震拳(ざんしんけん)
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壊迅撃(かいじんげき)
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旋轟拳(せんごうけん)
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牙砕脚(がさいきゃく)
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禍魂法(かこんほう)
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禍魂掌(かこんしょう)
オフェンシブアーツ
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劫迅烈震撃(こうじんれっしんげき)
ディフェンシブアーツ
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咆震衝(ほうしんしょう)
クリティカルアーツ
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羅喉(らごう)
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轟雷旋武(ごうらいせんぶ)
ブーストダイブ
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禍魂道(かこんどう)
補足:轟雷旋武(ごうらいせんぶ)は、ヒットorガードさせた時のみ追加入力継続可能。